現代ビジネスで大切なのはストーリー

ビジネス山口周, アート

とある場所で、山口周氏の講演を拝聴する機会があった。
タイトルは「ビジネスにおけるアートとサイエンスのリバランス」。

そこで聞いたお話。現代では、テクノロジーとデザイン以上に大切なものがある。それは「意味」であり「ストーリー」である、ということ。

「ストーリー」の重要さは、2年前からひしひしと感じている。それもあって、神話の法則など、ここらへんの書籍や映画を漁っていた。

それなのに、現在、私はあまりストーリーを打ち出していないのではないか?
ひとつひとつの行動だけが飛び出て、それらを線で繋いでないのではないか?

そう感じたので、まずはこのお話の備忘録を綴ろうと思う。

(だいぶん解釈が入ってサマっています)

なぜストーリーが大事なのか

現代という社会の特徴

世の中には、過剰なもの希少なものがある。過剰な物の価値は低下し、希少なものの価値は上昇するという原則は明らかだが、それでも過剰なものを提供しようとする人が後を絶たない。

現代はモノやソリューション、利便性などで溢れている。しかし、それらは溢れているからこそ、価値は低下している。

そんな現代で、日本一世界中で本が売れている人がいる。それは、片付けコンサルタントの「こんまりさん」である。

それは、彼女のコンテンツが、「モノを減らす」という近代の否定をうたっているところに知的付加価値があると評価されているからだ。

知的付加価値はどうすれば生まれるのか

過剰なものたちには、安く叩き売られるものしかないが、希少なものは、それが不便であっても、より高いお金を払って得ている人がいる。

ではその希少性とは、どのような面に現れるのか?

例えば、ガラケーが流行った時代があった。その時の会社はどこも同じようなガラケーを作っていが、彼らは何も間違ったことはしていない。それなのに衰退したのは、iPhone の登場によって、評価されなくなってしまっただけである。その理由は、明らかにデザインとテクノロジーが優位だったからだ。

そんな iPhone も、現代になると他社製品とも見分けがつかなくなってしまった。つまり、デザインもテクノロジーも似たり寄ったりだということ。しかしそんな中でも、iPhone が時価総額では世界最大で揺るがないのは、テクノロジーやデザインが理由ではない。その真の理由は、そのブランドが持っている「ストーリー」(それを作る・やる「意味」「目的」「ビジョン」「ミッション」)である。

この「ストーリー」が、希少性を生み、知的付加価値を上げることに繋がる。

なぜならば、人は感情の動きを重視するからだ。

デザインやテクノロジーは極めてコピーしやすいものだが、ストーリーは真似できない。だからこそ、ストーリーで希少性を生み、人の感情に入り込むことで、価値を上げることが大事になってくる。

現代のビジネスの傾向

現代では、実行部隊の買収が相次ぎ、どんどん下流(作る、世に出す段階)に力を入れているが、自由度が高いのは下流よりも上流(目的、ビジョン、アジェンダの定義等)である。

下流に掛ける時間は長いのに、purpose、vision、agenda などの上流をないがしろにしてしまっているのが、問題である。

「役に立つ」と「意味がある」

ビジネスのポジショニングの軸としては、「役に立つ(課題を解決する)」と「意味がある(ストーリーがある)」の2軸が存在する。

「役に立つ」ものは、競争が起こり比較され、いずれ収斂するが、「意味がある」ものは発散する。意味は多様化しても、それぞれがそれぞれの人に受け入れられうるものだからだ。例えばコンビニの商品で言うなら、「役に立つ」セロテープやハサミなどは1品目しかないが、役に立たないが「意味がある」タバコは1店舗だけで200種類もあったりする。つまりもしも、「意味がある」ものではなく「役に立つ」もので勝負するのであれば、世界1位〜2位に生き残れる見込みがないと、厳しい世界が待っているということだ。

「役に立つ」ものを作るのは、サイエンス能力であり、「意味がある」ものを作るには、センス(アートの能力)が必要になる。センスを正しく発揮することは難しく、「意味がある」モノ・ソリューションを提供することを断念する会社も少なくはない。逆に、これら両方の軸を持っている会社は一番強く、リスクヘッジ経営ができる企業である。

つまり私たちはこれから、センスを磨いて「意味」=「ストーリー」を創っていかなければいけないのだ。

ストーリーを創るために必要なこと

未来の構想力

課題とは、理想と現実の差分である。その両端を把握した上で、取り上げるべき適切な課題を見定める必要がある。つまり、真に必要なのは、ありたい姿を構想する力である。

違和感のセンシティビティを上げる

世の中の当たり前を当たり前と思っているとダメである。これは当たり前なのか?と違和感(感受性)を持つことが重要。

そのためには、相対化するという方法がある。例えば、airbnb は、現代の「カンファレンスがあるとその土地のホテルが高騰化し宿が取れない」という問題を当たり前だと思わずに、「700年前に巡礼者がホテルがなくても街の空いている部屋に泊まることができていた」という事実と相対化して比較することによって、課題を定義することができた。

いかに、日常に違和感を持つか。違和感のセンシティビティをあげるために、ありのままを受け入れず、疑問を持つことが大切。

そして、課題を自ら創り出すことが必要。

ヒューマニティを理解する

人の心を動かすストーリーを創るためには、人間は何に心を動かされて、どういうものを愛好しているのかを理解するために、人間を知る=ヒューマニティに対する理解が必要になる。

審美眼を鍛える

センスを鍛えるためには、審美眼が必要。そのためには、本物だけを見続ける必要がある。ただ、本物だからと興味もないのに無理やり見まくっても意味がない。それよりも好きなもの、心を動かされるものにどんどん触れていく方が重要である。

弁論術

アリストテレスの弁論術で「ロゴス」「パトス」「エトス」が語られている。

いいストーリーがあっても、「ロゴス」だけで語ってしまっては、相手に響かない。相手の大脳辺縁系にエモーショナルに訴えかけることで、相手の心からモチベートさせることができる。

お金もネットワークも、ブランドも技術も、すべて備えた大企業はたくさんあるが、彼らにはモチベーションが足りない。このモチベーションは、ありとあらゆる要素に勝つ力を持っているので、非常に大切である。

モチベーションを言葉で生み出せる人は、錬金術師と言われている。

ロゴスはなくとも、共感を勝ち得るストーリーと、パトスとエトスがあれば、モチベートすることができる。

ちなみに、リーダーシップ(マネジメント)も言葉がすべてである。自分で行動するとプレイヤーになってしまうからだ。言葉でいかに相手をモチベートさせて動かすか。イメージの伝え方次第で、相手の受け取り方は変わる。

企業のストーリー例

パタゴニア

「環境を守る」という極めて強烈なミッションがある。商品は、そのための手段である。

peach

格安航空会社とは結びつきにくいが、「戦争をなくしたい」という大きなミッションがあった。

「若い時からいろんな国に出かけて、お互いにリスペクトしあえるような友好関係が生まれたら、そんな国に爆弾を落とすことなんて出来ないでしょう?」

路線を増やすのも、価格を下げるのも、すべて意味繋がっている。このミッションを知っていれば、確かにピーチを選びたくなる。

まとめ

現代ビジネスで生き残るためには、ストーリーが必要で、それを創るためのセンス、アートの能力を身につけなければいけない、という話でした。

講演でご紹介されていたこの本、「ニュータイプの時代」を読みましたが、この記事に興味持たれた方は、ぜひこの本も読んでおかれることをオススメします。

講演の内容も入っていますし、より理解を深めたい方には持ってこいだと思います。

特にコンサルタント、エンジニア、左脳派ガチガチの方は、刺さるのではないでしょうか。

 

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