VUI が発展するために私たちは何をすべきか?

VUIの未来スマートスピーカー, VUI

以前こんな記事を書きました。

これは開発のお話で、そもそもAlexaスキルなどVUIを支えるコンテンツを作る私たちが、"いいコンテンツ"を作る意識が必要なのではないか、という問いかけでした。

ここで言う"いいコンテンツ"とは、自然な会話ができる、という点を挙げています。

ユーザーの購買行動フロー

ただこれって、ユーザーとの接点の中で考えるとだいぶ後ろの方だと思っています。どういうことかというと、ユーザーの購買行動をフローとして考えると、次のような流れになります。

認知>動機>検討>決定>支払>運搬>保管>利用>評価

上はデバイスの購買フロー、下はスキルの購買フローです。スキルは現時点無料が基本で、物理的ではないので、「支払」「運搬」「保管」は除外しています。

これと照らし合わせて考えたときに、前回の話は、下のフローの「利用」「評価」にあたる部分のお話でした。ここの評価が悪いと、次のスキルを使わなくなるという負のループに入る可能性が高まります。だから、開発者は評価のいいコンテンツを作らないといけない、というお話です。

ですが、この「利用」「評価」という行動は、フローの一番後ろで、まだ前にたくさんの行動があります。前の行動がなければ後続の行動は発生しないため、フローの前の方も考える必要がある、というのが今日の話題です。

ちなみに余談ですが、他人のデバイスでスキルを使ってみることで、自分でデバイスを購入しようか検討する場合は「動機」「検討」「決定」にも影響が出ますが、今回はこのようなシーンは割愛しています。VUI玄人がVUI初心者にスキルを紹介する場合は、そんなUXの悪いスキルは紹介しないだろうと、期待していますw

VUIにおける認知と動機とは?

認知とは、そもそも存在を知ることに加え、それで何ができるのか、自分にどう役立つかを知ることを含みます。そして動機(動詞にすると動機付けですね)とは、そのサービス・モノが使いたい・欲しいと思うことです。

例として、私が大好きなタピオカを買うときのフローを書いてみました(何してんねん)


※ 「決定」には、「店・ブランドを決める」と「メニュー・商品を決める」という2種類があります

私はチーズフォームトッピングが好きなので、それがある店は「自分に役立つ店」です。タピ業界(?)はもはやレッドオーシャンで店舗もたくさんありすぎるので、すべての店に行ってる暇なんてありません。その中でなぜその店に行くかというと、「自分に役立つ」=「自分の好みに合う」カスタマイズや限定メニューがあるか、「意味がある」=「映える」「話題提供できる」要素が必要になります。(前者の「役に立つ」後者の「意味がある」という観点は、山口周さんの本を参考にしています)

これをスマートスピーカーに置き換えると、認知とは、スマートスピーカーをはじめとしたVUIで何ができるか、どう自分に役立つかを知ること。そして動機とは、スマートスピーカー・スキルを使いたいと思う理由です。

つまり、どの動機に刺さるのかの仮説を立てて検証したうえで、その動機に刺さるような認知へのアタックにより力を入れる必要があるのではないか、という結論です。簡単に言うと、「ユーザーが欲しているユースケースを見つけて、それに対して訴求する」ってことです。

なぜまだ広まらないのか?

しかし、既にこのようなことを意識して取り組んでいる事例もあると思います。それでもまだ、日本のスマートスピーカー保有率がたった6%なのは、なぜなのか。

10年前のスマートフォンアプリに似た状況

こんな記事がありました。

…しかし、いまはまだまだ黎明期、やがてはVUIの本質を捉えたアプリケーションが登場すると思うのですが、現段階ではプラットフォームを狙うような土壌が十分に整っているとは言えない状況です。
引用:エンジニアHub

思えば、iPhoneが発売されたばかりの頃のスマートフォンアプリもそうでした。

10年がたったいまでこそ、ソーシャルゲームやSNSといった利用時間の長いアプリが当たり前のようにヒットしてますが、当時は「スマホを傾けるとビールが飲める(ように見える)アプリ」や「マイクに息を吹きかけて、画面上のライターの火を消すアプリ」など、かなりシンプルなものがヒットしていたことを覚えているでしょうか。

思うに、そもそも黎明期とはそういう時期なのです。繰り返しになりますが、プラットフォームを狙うには、まだユーザーが少なすぎるのです。

一方で、黎明期のユーザーの多くは「アーリーアダプター」と呼ばれ、新しいもの好きです。アーリーアダプターのインサイトを考えると、「新しいデバイスを自慢したい」という気持ちが強く、その相手は「まだそのデバイスを持っていないユーザー」であることが多いでしょう。そのため、デバイスの新機能を披露できるシンプルな体験を提供するコンテンツが好まれるのだと思います。

前述の「ビールを飲む」アプリや「ライターの火を吹き消す」アプリも、ガラケーのユーザーに対して「スマホならこんなことができるんだぜ」と、既存製品との違いを簡単に自慢できることがヒットの要因だったのではないでしょうか。
引用:エンジニアHub

イノベーター理論によると、消費者は新商品に対する購入態度の違いによって次の5つの層に分類されます。

  • イノベーター(2.5%)
  • アーリーアダプター(13.5%)
  • アーリーマジョリティ(34%)
  • レイトマジョリティ(34%)
  • ラガード(16%)

上に行くほど新商品に対する反応が鋭く、下に行くほど鈍感(無関心)になります。

2019年現在でスマートスピーカーを導入しているのは、アーリーアダプター。つまり今考えるべきは、いかにアーリーマジョリティに対して訴求するか、ということになります。

逆に言うと、まだ6%なのは段階的にまだ「そこ」だから、時代の流れから考えると当たり前、なのかもしれません。まだスマートスピーカーの登場からやっと2年経つかというくらいの時期ですしね。

アーリーマジョリティへの訴求方法

とはいえ、これからアーリーマジョリティに訴求することは必須となってきます。

ここで潰えて普及しないという事態は避けたいところ。(なぜかというと、なんででしょうね。私がVUIに魅せられているからだと思います)

アーリーマジョリティの特徴について調べてみました。

アーリーアダプターからの影響を受けやすい層とされており、(中略)
テレビや雑誌、今の時代だとインスタグラムで紹介されているのを見て、購買行動に移すようなイメージ。アーリーマジョリティは商品やサービスのメリットに加え、「今まさにトレンド」であることを訴求することが効果的です。
引用:マーケティングキャリア

アーリーアダプターは新しいものに対して比較的寛容で、新商品、新サービスについてのメリットを確認した上で、自分にとって良いものだと判断すれば購入を決定します。
引用:UX MILK

ふむふむ。

つまり、「ユーザーが欲しているユースケースを見つけて、それに対して訴求する」って方法は間違っていなさそうだ。

これで普及しないなら、理由は2つ。訴求ポイントが悪いか、届いていないかだ。

適切な訴求ポイントは?

これすごく難しいなと思っていて。実際スマートスピーカーを使っている人でも、カスタムスキルより標準機能を使っている人がほとんどだという話があります。それ自体は何も悪くないし、標準機能で事足りるならそれでいいやんと思っています。ですが、「もうヒトコエ欲しいよな」というのが本音。

そこで考えるのがペルソナ。

いやスマートスピーカーなんてターゲット限定してないしペルソナなんてどうやって考えるの?と思うかもしれないですが、ここで言いたいのは、ターゲットごとに訴求ポイントを変える、という話。

VoiceApp Labさんの「歯みがきくん」というスキル。このアーリーアダプターの中でさえもめちゃくちゃ使われているんですから、アーリーマジョリティの層にも、小さいお子さんが歯みがきグズってやってくれないと悩んでる人多いんじゃないかと思います。例えばピンポイントにそこを訴求するだけでも、「スマートスピーカー使ってみようかな」となる気がするんですよね。

だって、プライムデーでAlexa搭載デバイスがあんなにも安くなっているんですから…!

2019夏のプライムデーで売れたもの、世界では Echo Dot が一番なのに、日本のベスト3が水・モバイルバッテリー・紙おむつだった、というお話があって、この差はなんだろうなーと思っていました。(日本が悪いとかではなく、単純にこの差が興味深い)

どうすれば届くの?

発信しても、届かなければ意味がない。

前述の「歯みがきくん」の話も、きっと現状、アーリーマジョリティには届いていません。じゃぁどうすれば届くのか?アーリーマジョリティに届く3つの手段、口コミ、メディア、店頭で考えていきます。

口コミ

口コミで難しいなと思うのは、スマートスピーカーが家庭内で使うものだからという理由が大きいと思います。

「これすごいやろ!」と見せるにも、家に連れてくることが必要。普通はデバイスを持ち歩いていませんからねw

スマホでも使えるやん!と思いますが、わざわざ外でスマホを使ってVUIを訴求するのは、イノベーター・アーリーアダプター側に相当な伝えたい欲求がないと実行しないでしょうし、実際に「ほら、こどもがちゃんと歯みがきしてるでしょ!」と見せることが出来ないんですよね。(まぁ私はスマホでAlexa使って見せていますけどもw)

メディア

メディアは能動的に情報を得ようとしないと、自分のもとにたどり着きません。そんなメディアでアーリーマジョリティに情報を受け取ってもらうには、例えば「歯みがきくん」だと、「こそだてハック」など、ターゲットが利用している周辺に出現するといいのではないか?と考えています。

店舗

先日、参加したこちらのイベントでも「店舗」という話題があがりました。


(私は東京からZOOM参加でしたが、いつもの開発・デザイン目線とは違い、ビジネス目線でお話できてとても有意義でした)

何の話かというと、「家電量販店でスマートスピーカーを見かける?」という話でした。

うーん、あまり記憶にないな…。

売り場はあってもあまり訴求できていないのかもしれない。

一方で去年の冬、有楽町の丸井でこんなブースを見つけました。

一応、目に触れるところにはあるんだ。

けれどふと思う。この訴求では、まだターゲットの心を掴むには至らないのではないかと。

VUI が発展するために私たちは何をすべきか?

VUIの発展には、アーリーマジョリティの心を掴むことが必須となる。その中で、イノベーター・アーリーアダプターである私たちは、アーリーマジョリティに対して何をすべきなのか。

言うたら得体の知れないものなわけですよwスマートスピーカーって!そんなもの、利用イメージがわかなければ、手に取るはずもないですよね。

スマートスピーカーが日常にどう溶け込むのか、それがあることで自分の日常がどう変わるのか、「役に立つ」と「意味がある」という軸でプレゼンしていかなければいけないんです。(必ずしも両方ある必要はなく、「意味がある」が訴求できればそれだけでもいい)

それは一人のユーザーである私たちでなく企業のやるべきことかもしれません。ですが、少なくとも私はVUIが好きですし、VUIの発展を願っています。だからこそ、アーリーマジョリティへの訴求ポイントと届ける方法をもっと考えていきたいなと、思うわけでありました。

 

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