教育ゲーム作りの真髄を探るために開発者に直撃してみた
今回は縁があって、教育系のゲームを制作されている方にヒアリングする機会を得ることができました!
Contents
なぜ教育ゲームなのか?
先日、なぜゲームを創るのかについて語ってみました。
ゲームを通じて何かを学び、出来ることを増やして未来を広げたいという想い。
その中で、こんな想いがあると書いています。人に学びや経験を与えることを喜びとしているワタクシ。それを、より楽しく実現したいなぁとゲームに矛先を向けました。
なぜヒアリング?
しかし、ボードゲームなんて作ったことがない。先日ハッカソンで作りましたが、まだまだ分かっていません。
学び体験を与えるには、かなり設計が大切になってくると感じ、それならば実際に作っている方に聞こうではないか!ということで、知人の知人の知人の方をご紹介いただきました。
そしてめでたく、ありがたいご縁をいただき、「就カツ!」「パシリの流儀」「アイドルマッチング」という三作品を開発された Career30.net の小野田純二さんにお会いしてきました!
なんと3時間もお時間をいただき、それぞれのゲームに込めたメッセージやルール、製作意図など、たくさんお伺いすることができました。(お忙しい中、本当に感謝しかありません!!)
ゲームの紹介
ここからは具体的なゲームのご紹介です。ゲームマーケットにも参加されており、また企業研修や大学での就活支援でよくご活用されているそうです。
ひとつひとつご紹介をいただくと、よりメッセージが見えてきて、本当にリアルと連動しているのだと感じることができました。
就活ボードゲーム「就カツ!」
ルール
このゲームの目標は、プレイヤー全員で内定すること。協力ゲームです。
詳細
1回のゲームは6ターン。アクションは、黄色いイベントカード(ランダム)と、橙の行動カード(選択可能)を1枚ずつ選ぶことで、1ターンで2回アクションできます。
イベントカードと行動カードで出来ることは3種類。
- 企業分析(仕事理解)
- 弱点克服(自己理解)
- 能力向上(啓発的経験)
企業分析で情報を得て、その会社に必要なスキルを把握。
最初は裏返しにされていた求める人材カードを表にすることで、その会社はどのスキルを重視しているのかが分かります。なお、企業情報はランダムで決まりますが、これは就活を始めたばかりの学生は、情報を知っていてもその価値が分かっていないため、手探りで始めるよね、という現実を反映しているそうです。
なお、応募が増えて倍率が高くなると、求める人材カードが追加されます。つまり、必要なスキルが高くなり、より内定をもらうハードルが高くなるということです。これも現実が反映されていますね。
能力向上は、好きな能力を+1する時間に当てることができます。現実世界も時間は有限なので、どこに力を注ぐか、というのがポイントになってきます。
弱点克服では、自分には見えていなかった弱点を知って克服することができます。
「弱点って、人に指摘されないと分からないよね」ってことで、誰かに他己分析してもらうと、自分の弱点カードを表にすることが出来るという仕組み。
克服すると、カードを天地ひっくり返して、プロフィールの裏に重ねます。
弱点克服のポイントは、弱点を克服することで、副次的に別の能力も上がることもあり、効果が高いという点。(副次的効果がないものもあります)
これをゲームでは点数で表現しています、例えば「説明会ではいつも後方に座る」という弱点は、向上心・探究心が低い(-1)ことの象徴でしたが、これを克服すると向上心・探究心(+1)だけでなく、協調性(+1)もアップします。
ゲームアイテムも面白く、カードに重ねることで数値の増減がわかりやすくなっています!このクリアフォルダは、わざわざ広州の現地工場で特注したのだとか…。すごい。
カードの色分けもきっちりされているので、片付けも簡単。
メインメッセージ
「就活は協力すべき」
だから目標が「全員内定」になっています。就活をやっていると不安になり、落ちると恥ずかしくってつい隠してしまうもの。けれども本当は、情報が大切。だからこそ、みんなで協力して情報を共有することの大切さを実感できるようなゲームになっています。(協力の目的は、情報共有以外にもあると思いますが)
プレイ推奨時期
就活始める前の大学2回生くらいにプレイするといいそうですが、実際は就活なんてしたくない人がほとんど…そのため出遅れてしまう人が多数発生します。その危険性を理解するために、ターンを半分に減らした短縮版でプレイし、難易度をあげます。そうすることで、早く始めることの大切さを伝えることができるそうです。
アイドルマッチング 〜採用体験ボードゲーム〜
ルール
こちらは採用を体験するゲーム。アイドル(女の子)のカードを集めて、ユニット(役)を作るゲームです。ポーカーや麻雀に近いルール。
詳細
年齢や特技、髪の長さなど、あらゆるパラメータを持ったアイドルのカードを集めていきます。
実際の役はこのような感じで、例えば13〜15歳の女の子を2人ずつの6人ユニット(13歳を2人、14歳を2人、15歳を2人など)を作れば、役は Lv.7 となります。
ですが、人材の傾向は毎年変わります。それを表現するため、全カード60枚をすべて使うのではなく、一部のみを使ってプレイを行います。そのため、今年の市場(プレイヤーの手札+山札)にはどんな人材がいるのかというのが毎回変わります。
プレイヤーは市場の傾向が不明なまま、条件を指定して集めなければいけません。例えば、全カード60枚のうち13歳のカードは2枚しかないのですが、今年の市場に、その2人ともがいるかどうかは分からない、ということです。
条件が厳しいと集めにくいため、役が高得点になります。
メインメッセージ
採用をとる側(企業)ではなく、とられる側(大学)の想いを反映したもので、「人材がほしいなら現実的な条件をしっかり伝えよう」というメッセージがあります。
「なんかいい人いない?」というのがよくあるそうで、そんな条件じゃ誰を出せばいいか分からないよ、ということです。
パシリの流儀 〜実践仕事術〜
ルール
先輩から指示されたとおりにパンを買ってきて、いかに条件通りのものを持ってこれるかを点数で表します。
詳細
指示が書かれたカードを4枚に合致するパンを選びます。
必要なパラメータは4つだけですが、実際にパンのカードには5つパラメータが書かれていたりします。あえて評価に関係のない要素を入れることで、プレイヤーはそれに惑わされる人かどうかを判断することができるということです。
カードによっては、「あ、やっぱりさっきのナシ」というような理不尽なカードも…。(というかパシリなので、すべて理不尽ですねw)まるで要件定義で決めたものをあとあと崩されるような感覚です。
メインメッセージ
「適材適所を目指すために、自己理解を深めよう」というのがメインメッセージです。
就職してもすぐ辞めてしまう人がいるのは、イメージギャップがあるのが問題のひとつとしてあります。このゲームを通して、自分が仕事を行う時の行動のクセを客観視して、適材適所を目指そうということが目的です。
大切な学び
伝えたいメッセージが一番大事
ゲームを作るために、参考に遊んでみたゲームってありますか?
私は、伝えたいメッセージのエッセンスをゲームに載せて作っています。既存のゲームシステムをベースに考えると、元のゲームに引っ張られて本質が曲がってしまう恐れがあるので、既存のゲームは参考にしていません。
伝えたいメッセージ。これをブレさせないことが大事。
伝えたいメッセージを軸に作っていくと、自然と現実とリンクする。だから、プレイしてもらう中で、その時々の状況が、どのように現実とリンクしているか?と考えることで、より学びが深まり、ゲームを現実に活かすことができる。
テストプレイにおける注意
テストプレイを行うと、様々な意見が出るかもしれないけれど、それらすべてに対処しようとしてしまうとどんどんブレていってしまう。
自分のメッセージと異なる批判を受けた場合は、受け入れる必要はない。それよりも、メッセージを守る方が大事。
ゲームだからこそ学びを受け入れられる
就活をテーマにした「就カツ!」というゲームでは、ゲームの中で内定をもらえたりもらえなかったりする。
しかし、「これは現実の自分ではない」と思えるようにすることで、学びを受け入れやすくなる。また、内定がもらえないと「自分はだめだ…」と落ち込んでしまうリスクがあるが、そんな人に対しても「これはあなたではない」と思えるようにすることで、メンタルケアにもなる。
そのために、あえて名前を付けている、とのこと。ゲーム上の名前があることで、これは自分ではないと思える。
ゲームで失敗できる
人は失敗しないと成長しない。ゲームで失敗できるとラッキーですね。現実で失敗する前にゲームで失敗しておくことで、現実に活かすことができる。
学びの振り返り
なぜ失敗したのか、なぜ上手くいったのかを振り返って、現実に活かせるように学びとして落とし込むことが、大事。だからこそ、特に学びをテーマに扱うのであれば、振り返りは必須。
ゲームはロジックの破綻を許してくれない
研修などだと、言葉でいくらでも補完できたりしますが、ゲームにしてしまうと、ロジックの破綻は許されません。だから辛い。
言語化というレイヤーはまだ浅くて、体験をさせるというのがいかに深いレイヤーなのかが分かります。
まとめ
ということで、これでもかというくらい学びが深かった3時間でした。
やはり一番大事なのは、メッセージ。何を体験させたいのか、何を伝えたいのかを極めることが何よりも大事なのだと分かりました。
ご興味ある方は、体験会を開いてくださるかも…なので、私までお声がけください^^。
おまけのこぼれ話
今回、あおいさんという方にお声がけして、一緒に小野田さんのお話を聞きませんか?とお誘いしたのですが、彼女はなんと私がボードゲームを作ったというブログを読んで、連絡をくださった方でした。今回お会いするのは2回目。
そしてゲーム作りたい!という声を聞いて、こんな人がいるよと紹介してくださった藁谷さんや、白井さんのお力がなければ、ここにたどり着いていないわけで。
発信すると、いろんな方と繋がることができるのだなぁ〜と改めて素晴らしさを感じることができました。
教えてくださった小野田さん、ご紹介くださった藁谷さん、白井さん、そして一緒に参加してくれたあおいさん、ありがとうございました!
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